研究概要 |
かさ高い置換基を有するスチレン系モノマ-を設計、合成し、リビングアニオン不斉重合法を用いて光学活性なスチレン系の高分子を合成することを目的として研究を行った。かさ高い構造を有するモノマ-がアイソタクチックに重合すると、左巻あるいは右巻のらせん構造を有する高分子が生成する。その重合反応に光学活性な開始剤を用いるとらせん構造を左右どちらか一方に片寄らせることができる。この場合、モノマ-が光学不活性であっても、片一方に巻いたらせん構造の立体配座異性に基づいて光学活性が誘起される。 上記の条件をみたすスチレン系モノマ-として、3,5ーdiーtertーbutylー2ーmethoxystyreneを2,4ーdiーtertーbutylphenolを出発物質として合成した。合成したモノマ-は、ビニル基のオルソ位にメトキシ基を、また、3と5位にtブチル基を有していて、CRKモデルでポリマ-を組み立てると、らせん構造をとる。重合反応はトルエンを溶媒とし、nーブチルリチウムをアニオン重合開始剤に用い、(ー)ースパルティンを共存させて高真空系を用いて重合反応管を調整した。標準的な重合系の濃度としては[モノマ-]/[Li]=20、[Spart]/[Li]=1.2(モル比)である。重合温度は-30〜-78℃、重合時間は24〜72時間である。重合反応はLl^+を対カチオンとするカルボアニオン塩の色が重合中に消えてしまうことはなかった。重合物は、ベンゼンに不溶のものと可溶のものが同時に生成した。ベンゼン可溶のポリマ-のMwは約2000で分子量分布は1.1程度であった。この可溶部分は光学活性を示さなかった。ベンゼン不溶部分が光学活性である可能性を考え、得られる高分子全部を可溶化させるために、スチレンモノマ-が重合終了後にメタクリル酸メチルモノマ-を添加してブロックコポリマ-とし、施光度を測定したが、[α]^Dとして4.6°しか発現せず、モノマ-のかさ高さが不充分の可能性がある。
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