研究概要 |
本研究は,粉砕操作によって無機固体表面に生成されるラジカルを利用してビニルモノマ-の重合を試み,そのラジカルの重合活性および重合反応速度と粉砕速度の関係などを検討したものであり,これまで複合材料で最も大きな問題であった界面の親和性を改善できる複合材料製造法として十分に応用可能であると考えられる。 実験試料には石英・長石など5種類の天然無機物および石英ガラスの計6種類を用いた。また,反応器には窒化ケイ素製のポットおよびボ-ルを,粉砕機は振動ボ-ルミルを用いて2通りの方法で行った。すなわち,石英表面に生ずるラジカルの測定のための乾式粉砕とビニルモノマ-溶媒中での石英の湿式粉砕である。以下に得られた主な結果を示す。1)石英および石英ガラスの粉砕時におけるラジカル濃度は,粉砕時間と共に増加するが,生成された固体表面積当りのラジカル濃度はほぼ一定である。2)ビニルモノマ-浴媒中での石英の粉砕実験では,明らかに石英の生成表面積と重合率との間には一定の比例関係が存在する。3)重合反応に対する活性は,本実験で用いた6種類の試料すべてに認められたが,その活性は試料によって大きく異なる。4)種々の条件で得られたポリマ-と無機粉体からなる複合粉体は,ポリマ-量が多い場合には粉体はほぼポリマ-で被覆される。また,わずかなポリマ-量でも粉体表面は親水性から疎水性へと改質される。5)ソックスレ-抽出によりポリマ-と粉体との親和性を実験的に検討した結果,明らかにポリマ-と粉体との接着力は強固になる。6)石英のラジカルの寿命は不活性ガス中では極めて長時間(80日以上)保たれることが明らかとなり,粉砕操作後に重合反応を行わせる後重合も十分可能である。
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