研究概要 |
本研究は,研究代表者らが開発したエステルの加水分解反応を用いた液滴周りの総括物質移動容量係数k_Laの測定法および顕微鏡とビデオカメラを組合せた液滴径測定法を用いて,種々の液々系撹拌槽での物質移動容量係数および液滴径の測定し,さらには物質移動係数k_Lの算出を行い,以下に述べる結果を得ることができた. (1)単段翼を備えた撹拌槽:単段翼として種々の寸法のパドル翼を用いた撹拌槽における液滴まわりの物質移動機構を測定した結果,微小液滴まわりの物質移動係数は固液系撹拌での相関式で良好に相関できることが明かとなった.また,平均液滴径は撹拌翼がスイ-プする体積基準の単位容積当りの撹拌所要動力で良好に相関できることを示した. (2)金網付撹拌翼の物質移動特性:通常のパドル型撹拌翼に金網を取り付けた撹拌翼を試作し,槽内にスケ-ルの小さい渦を発生させることにより液滴分散効率の向上を試みた.その結果,基本となるパドル翼の翼板先端部分からつき出た金網部分が物質移動速度および液滴分散に有効であり,このとき単位容積当りの撹拌所要動力基準の物質移動効率が大巾に高められることを明らかにした. (3)縦長撹拌槽における物質移動特性:縦長の撹拌槽の操作では2段翼を用いる場合が多い.この場合,2つの撹拌翼をどのように幾何学的配置すれば物質移動特性が最も良い効果を得るのかを実験的に検証することを試みた.その結果,槽径の2倍まで液を入れ,槽を2分したとき独立した2つの槽のつみ重ねになるように翼を配置したとき物質移動効率が最高となることを明らかにした. 以上,本研究ではこれまで不明であった撹拌槽内での液滴まわりの物質移動機構を実験的に明かにすることができた.今後はこの研究を流通系の液々系撹拌槽にまで拡張することを試みたい.
|