研究概要 |
前年度の研究では,Acetobacterium woodii(ATCC29683)は独立栄養条件下では菌体濃度を十分に高めることが困難であるため,フルクト-スを基質として前培養により得た停止期菌体を遠心分離して高密度化し,アルギン酸カルシウムゲルによる固定化菌体による気泡塔型バイオリアクタ-での酢酸生成を検討した。しかし,本固定化法は高密度の細胞懸濁液を用いた場合と比べて酢酸の生産性が劣り,また培養の経過とともにゲルの機械的強度が著しく低下するという問題点が明らかとなった。 そこで,最終年度は菌体の包括固定化法の代替として凝集剤の添加による菌体のフロック化を試み,それによるA.woodiiの酢酸連続生成を検討した。まず,硫酸バンド,ポリ塩化アルミニウム等の無機系のものからデンプン,ゼラチンの天然高分子系,ポリアクリルアミド等の合成高分子系までを含む多様な19種の凝集剤についてA.woodiiに対する凝集作用ならびに酢酸生成におよぼす影響を調べ,ポリメタアクリル酸エステル系の高分子凝集剤が本研究の目的にかなうことを見い出した。 A.woodiiの高密度培養下での酢酸生成特性については,本実験条件下では菌体濃度が増加するにつれて比生産速度は斬減するが,酢酸生産速度は菌体濃度が8.5g/L程度において最大値を示すことが明らかとなった。この最適菌体濃度において凝集剤を用いて培地交換を行いながら,気泡塔型バイオリアクタ-での連続培養を検討した。その結果,培養液中に凝集剤を添加する本培養法が酢酸の効率的生成,菌体と培地(生成物)の分離という観点からきわめて有効であることを確認した。
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