研究概要 |
石炭転換プロセスや石油精製プロセスの生成ガス中にはH_2S,SO_2などの無機硫黄化合物と硫化カルボニル(COS),二硫化炭素(CS_2)などの有機硫黄が含まれている。これら硫黄化合物の回収や除去は、最近問題となっている酸性雨を初めとする地球的規模の環境汚染を防止,装置腐食の防止,硫黄資源の回収の観点から極めて重要である。H2_s,SO_2等の無機硫黄化合物の除去・回収に関しては湿式・乾式いずれの方法もほぼ確立しているが、COS,CS_2の除去法は確立しているとは言えない。特に、近年の省エネルギ-,エネルギ-の効率的利用という観点から、乾式でしかもできるだけ低温での除去・回収技術の開発が重要と考えられる。本研究では、コ-クス炉ガス(COG)を都市ガスとして利用する場合を想定して、COG中に100ppm程度含まれるCOSとCS_2を乾式でかつ常温に近い温度で除去する方法の開発を次の2つの側面から検討した。 1.加水分解触媒の開発:高温での結果から、塩基性触媒が低温でも加水分解能をもつと推定されるので、アルミナを初めとする種々の塩基性触媒,さらには塩基性点を制御した種々の触媒を試作し、除去試験を系統的に実施した結果、γーアルミナ触媒及びそのK担特触媒により40℃という低温,乾式でCOSを長時間100%H2Sに変換することに成功した。この加水分解で生成したH_2Sは既往の方法で完全に除去できる。 2.加水分解能とH_2S除去能を併せ持った除去剤の開発:αーFeOOHを一昼夜220℃で調製し、結晶の転移を制御することで、O^<2ー>,OH^ー等の多数の塩基性サイトと結晶水の存在する触媒を開発した。この触媒を用いてCOSを50℃,乾式で長時間にわたって完全に除去することに成功した。さらに、種々の活性点の評価試験等により、COSは触媒の塩基性サイトに吸着して結晶水と加水分解,H_2Sに変換され、その後直ちにFeS系の化合物として除去されるという除去機構を明らかにした。
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