研究概要 |
油料作物のヒマを実験園場で裁培し,開花後20日目の〓果を採取して組織の形態を電子顕微鏡で調査した。また開花受精後の〓果の表面に発生する刺を切除して成熟させ,標準区と対比させて種子の形成と種子内容物の品質を調査した結果,次の結論を得た。 (1).発育中の〓果の組織について 〓果の表面は葉緑素を含み気孔を有する組織ら,茎葉に類似した形態を有し,珪素 カルシウムおよびカリウムに富むことが明らかになった。 一方,中果皮は組織が全く異り,葉緑素は殆んど含まれず,堅い組織で構成されていた。この組織はカリウム,カルシウム,珪素および塩素などを含んでいることが判明した。またこの堅い組織は2種類の異なる組織を形成して中の種子を保護していることが認められた。 (2)〓果上の突起状組織(刺)の切除と種子内要物生成との関係 発育中の〓果上に発生する突起状組織(刺)は,400mmの波長を吸収していることを以前筆者が見出したが,この波長は光合成上にはさほど重要でない波長であるため,種子内要物の生成との関係を調査した。開花及び受精後この刺を切除し成熟させた結果次のことを明らかにした。 【○!a】種子の含油率:種子中の油脂生成量を刺切除区と標準区とで比較すると,乾物ではそれぞれ62.77%および64.39%で,刺を切除した区は油脂の生成量が低かったが,統計的には有意差が認められなかった。 【○!b】油脂の酸価:種子から抽出した油脂の品質を比較するため,酸価を調査したところ,刺切除区は0.83に対し標準区は0.53で刺切除区の品質が若干劣化していた。しかしこの場合も統計的に有意差が認められなかったが,油脂の生成には刺を通じて受容する光が必要であると思われる。 【○!c】種子百粒重:刺切除区は27.2g,標準区は28.6gで刺切除区が劣ったが,この場合も統計的に有意な差は認められなかった。
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