研究概要 |
京都府立大学所蔵の約500品種のなかから予備調査で低温苗立ち性が高かった6品種と古屋によって苗立ち性の高いことが示唆されているマダガスカルの5品種を含めて28品種の湛水表面播種における苗立ち性を確定するとともに,室内検定における検定指標について検討した.播種期を移動して〔第1回目3月25日(T_1),第2回目4月21日(T_2),第3回目5月14日(T_3),第4回目6月24日(T_4)〕異なる温度条件を設定した.T_1(13〜18℃)およびT_2(18〜22℃)の苗立ち率によって低温苗立ち性を比較した.低温苗立ち性が高かったのは中国原産のSakuzairaiとポルトガル原産のArroz-terraの2品種であった.両品種とも短稈,早生であり倒伏が認められなかったことから,直播用品種の育種素材として期待できる.しかし,Arroz-da-terraは赤米であり,食用米として利用するにはさらに育種学的な検討が必要があろう.マダガスカル品種の低温苗立ち性はとくに高いとは言えなかった.東南アジア,インド,ブラジルの品種には低温苗立ち性に優れた品種は見当たらなった.最終的な苗ち率(5/G)を播種したうち1葉を抽出した個体の割合(1/G),1葉を抽出した個体のうち3葉を抽出した個体の割合(3/1),3葉を抽出した個体のうち5葉を抽出した個体の割合(5/3)の積として表し低温苗立ち性の品種間差異を解析した.品種間差異は主として3/1によって支配されていた.3/1は室内試験における初期発根性と有意な相関関係を示したが,Shootの初期伸長性との相関係数は有意ではなかった.従来の初期伸長性による室内検定ではSakuzairaiとArroz-da-terraは見落とされる可能性が強い.低温苗立ち性の室内検定において,伸長性の指標よりも根が土壌に貫入し苗を定着させる特性に関連した簡易な指標が必要である.
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