研究概要 |
1.Oryzalide類10種の単離と構造決定 イネ葉の先在性新規ジテルペン系抗菌物質Oryzalide Aと構造類似の9種の関連物質を新たに単離し,構造を決定した。すなわち,農林27号の止葉20kgを80%メタノ-ルで抽出し、常法により酸性及び中性企画を粗抽出後,シリカゲル・セファデックスLHー20カラム,高速液体クロマト,分取TLCなどによりOryzalide Aを含む酸性物質4種,中性物質6種を単離した。 ^1Hー, ^<13>CーNMR,HRーMS,IRその他の機器分析により構造を決定した結果,酸性物質としてOryzalideA,B,Oryzalic acid A,Bの4種,中性物質としてCompound A,B,C,D,E,Fの6を同定し,それぞれの構造上の特徴,収量,抗菌活性などを明らかにした。 2.微量定量法の確立と予備定量結果 収量と抗菌活性から主要物質と考えられた4種酸性物質をメチル化後,フラグメントイオンm/z305を用い,capillary columnを用いたGCーMSーSIMによる微量定量法を確立した。さらに試料調製法に分取TLCを追加・改善した結果,イネ葉中では主にOryzalide A,Oryzalic acid Aの形態で存在することが推定された。また,Oryzalide Bの17位エキソメチレンを重水素で置換させた[17ーD_2]Oryzalide Bを誘導し,内部標準として使用した。 上記条件で微量定量を予備的に行った結果,イネ白葉枯病に対する低抗体を異にする4品種群・8品種のすべての健全葉中に4種抗菌物質が検出されたが,それらの含有量と低抗性の強弱との間には一定の相関は認められなかった。農林27号の器官別にみるとOryzalide類はほとんど葉にのみ存在し,茎・葉鞘には微量で,根と穂からは全く検出されなかった。生育時期別では生育が進むほど含有量が増加し,登熟期>分けつ期>幼苗期の関係であった。イネ葉身に針束で付傷すると3〜4倍量に増加し,本病細胞不親和性系統針束接種葉で9.1倍,親和性系統針束接種葉で7.2倍に増大することが判明した。
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