研究概要 |
1.熊本県における放飼実験 (1)チュウゴクオナガコバチ放飼後の経過 熊本県大津町のクリ園で1982年に放飼されたチュウゴクオナガコバチは,放飼6年後までは1%前後の低い寄生率であったが,1989年以降徐々に増加し始め,1990〜91年には約3%,1992年には約6%に達した。 (2)随意的高次寄生者の影響 熊本県で放飼寄生蜂の増殖が遅延している原因の一つとして,随意的高次寄生者の二次寄生による死亡が考えられたので,チュウゴクオナガコバチの終齢幼虫期以降の死亡過程を調査した結果,同寄生蜂の終齢幼虫は7月から8月にかけて高い死亡を受け,最終的な生な率は16〜19%であった。主な死亡要因はクリタマヒメナガコバチなど3種の随意的高次寄生者の二次寄生であることが判明した。 (3)チュウゴクオナガコバチの性比 放飼寄生蜂の増殖遅延のもう一つの理由として,定着個体群の低い雌比(17%)が考えられた。しかし1990年以降雌比は増加し始め,1992年には66%に達し性比の改善が認められた。 2.福岡県で放飼されたチュウゴクオナガコバチの分布拡大 1981年に福岡市油山で放飼されたチュウゴクオナガコバチは,1991〜92年の調査で福岡・佐賀両県下に広く分布を拡大し,それぞれの定着地で密度を増加させつつあることが判明した。 3.未放飼地における土着寄生蜂 チュウゴクオナガコバチ未放飼地の岡山県と宮城県で土着天敵を調査した結果,両県ともクリマモリオナガコバチが最優占種であったが,岡山県では種数が多く随意的高次寄生者による死亡率が高く,宮城県では種数が少なく随意的高次寄生者の影響は少ないという差が見られた。
|