研究概要 |
キボシカミキリの地理的変異を生理的な面より検討するためにエステラ-ゼザイモグラムについて研究を行った。 1.卵期および幼虫期における発育に伴うエステラ-ゼザイモグラムの変動について調べた。卵期には活性が強く,αーナフチル酢酸に反応するバンドGがあらわれ,他に活性の弱い2体のバンドが発現した。その後,5日目頃よりバンドGの消滅と新たに数本のバンドの発現がみられた。幼虫期は11本のバンドがみられ,1〜2齢期はバンドH以上で活性が強く発現し,3齢以後他のバンドも徐々に活性をましてきた。 2.幼虫組織,血液,脂肪体,消化管におけるエステラ-ゼイモグラムについて調べた。4〜5齢期幼虫の血液ではバンドB,Cと陰極側に一本発現した。そして,東日本型では活性の弱いバンドの発現する場合もあった。脂肪体ではB〜F,Hと陰極側に発現したが,バンドB,C以外は活性が弱かった。消化管ではバンドA,B,C,E〜Jが発現し,AとH以上のバンドで活性が強く他は弱かった。 3.幼虫ならびに成虫におけるエステラ-ゼザイモグラムについて調べた。両者で原点より陽極側へ移動するバンドが多く検出され,変異のみられる原点から中位までのバンドA,B,C,Dについて地理的変異を検討した。バンドAは東日本型で発現が30〜60%みられた。しかし,西日本型では取鳥を除いて発現しなかった。その他のバンドは東日本と西日本で差異はみられなかった。鳥取において,バンドAは1989年まではみられなかったが1990年1ペアで1991年には30%も発現する様になった。 また,バンドAに関して,発現個体と発現しない個体の交雑により調べた結果,F_1ではすべて発現し,そのF_2では発現は3:1に分離した。 以上の結果,地理的変異はバンドAの発現において認められた。そして,バンドAは幼虫組織の消化管で活性が強いことが明らかとなった。
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