研究概要 |
1.はじめに腐植の抽出方法について検討した。従来の加熱抽出に比較して,室温抽出の方が抽出率はやや低下するが,実験操作が簡易であり、さらに抽出腐植の特徴が明瞭であることから,本実験においては室温抽出を用いた。 2.室温抽出腐植の光学性から,ΔlogK,Color density,Melanic index,Pg indexを求め,A型腐植酸をもつ土壌を腐それ以外の型の土壌とに区分することが可能であった。さらにColor densityの値を用いることによりA型腐植酸をもつ土壌を4つに細区分することができ,全体として5つの型に区分できた。 3.NMRとIRによる抽出腐植の構造的解析から,Color densityの値と化学構造には密接な関連が認められた。Color densityの低い腐植酸は、低分子側鎖が多く,共役2重結合は少ない。CDが高くなるに従って低分子の側鎖部分は減少し、共役2重結合系を多く含むことが認められた。腐植化過程の進行は、共役2重結合系の発達ともいえる。 4.これらの構造的解析より、アルカリ常温抽出の光学的特性(ΔlogK,Color density,Melanic index,Pg index)による腐植の細区分は、ほぼ確立したと考えられる。 5.土壌の微細形態については、土壌薄片の作製方法から検討を行ないほぼ確立した。前年度は25×40mmで行なっていたが、今年度は50×70mmで検討し、さらに80×100mmについて準備・検討中である。現在の段階では,黒ボク土の微細形態の特徴を検討中であり、微細形態から見た腐植の細区分については今後の課題である。大きな薄片から得られる情報は,量も質も飛躍的向上するものと思われ、種々の土壌の特徴を明確にできるものと期待している。
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