研究概要 |
[目的]高木のこれまでの研究結果によれば、亜鉛乏植物において、a.)トリプトファン生合成には異常がないこと b.)遊離IAA量そのものは正常であること、などが明かである。また、亜鉛欠乏植物は茎の伸長阻害が特徴で、その植物に亜鉛を与えると,ただちに茎のみの生長回復が起こることも判明した。 これらの結果を総合し、亜鉛はIAAの生理活性発現における因子として機能しているのではないかという着想に至った。したがって、この仮説を支持するための実験として、オ-キシンをもっとも重要な因子として起こる生体反応ーカルス化に目を向けた。本報告では、チガヤ茎頂を外植片として、オ-キシン存在下において、亜鉛有無によるカルスの誘導とその後の状態を観察した。 [方法]供試植物としてチガヤ(Imperata cylindrica beauv)の茎頂を用い、2,4ーD 2ppmを含むMS培地に、Zn 1ppmを添加した区(+Zn)Znを添加しない区ーZnの2通りの培地にチガヤ茎頂を移植した。移植後、30℃、1ケ月間培養し、両培地におけるカルスの誘導形成を観察した。 [結果]移植して1週間では生育の差は見られないが、2週間目頃から次第に差がつき、+Zn培地のカルスは大きくなった。ーZn培地ではカルスの生育は僅かか、もしくは停止した。その後ーZn培地のカルスは黒変し、カルスは生育しなかった。オ-キシンが存在してもの亜鉛がなければカルスは生育しないという結果が得られた。以上のことからオ-キシンの作用が発現するためには、亜鉛が必要であることが示唆される。
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