研究概要 |
1.メチオニン過剰障害の発現機構 1)メチオニン(Met)過剰摂取ラットの尿中に,始めてMetのトランスアミネ-ション(TA)経路の代謝産物である2ーケトー4ーメチルチオ酪酸とその誘導体,2ーヒドロキシー4ーメチルチオ酪酸を検出したが,その量は摂取Met量に比べて極めて微量であり,その他のTA経路の代謝産物が検出されなかったことから,Met過剰摂取時にTA経路が活発に作動しているとは考え難い。 2)Met過剰摂取ラットの各組織,及び尿中にヒポタウリンが蓄積することを見出した。 3)Met過剰摂取により貧血症状が発現した。一方,網赤血球数は増加しており造血機能亢進が認められたことから,Met過剰摂取により赤血球合成を上回る破壊の亢進により溶血性貧血が発生すると考えられた。 4)走査型電子顕微鏡観察の結果,Met過剰摂取群の赤血球には,外方突出型の異常形態を有するものが多かった。 5)Met過剰摂取群の赤血球膜は浸透圧抵抗性が低く,膜の脆弱化が確認された。 6)TBA法によって測定したMet過剰摂取群の血漿中過酸化脂質は大きく上昇していた。 7)抗酸化剤としてVit.Eを過剰量添加した飼料を与えても貧血症状は発現した。しかし,TBA値は低下しており,又,赤血球中の抗酸化酵素の内,SOD活性のみがMet過剰群で低下したが,これもVit.E過剰添加で回復したことから,脂質過酸化は貧血発生に対する決定的要因ではない,と考えられた。 8)一方,赤血球膜タンパク質のSDSーPAGEの結果,過剰Met摂取群で35〜60kDaのバンドが多く認められ,膜脆弱化に及ぼすタンパク質の変化の影響が示唆された。 9)臓器の鉄,銅,等のミネラル濃度もMet過剰摂取により変化し,肝臓中の銅以外は,全てMet過剰群で増加した。脾臓への鉄沈着は既に知られており,異常赤血球除去の結果と考えられるが、他のミネラルや臓器についてもその濃度に変動が生じており,Met過剰摂取によりミネラルの動態も変化することが示された。 10)Met過剰摂取に伴う以上の症状は,飼料摂取減少,成長抑制と共に,全てグリシンの添加により抑制された。 II.消化and/or吸収速度の小さいMet誘導体によるスレオニンインバランス防止の試み. 1)ペプチド結合をcis型としたCycloーdiMetを合成し,これを低カゼイン飼料に補足してラットの飼育実験を行ったが補足効果は得られず,ジケトピペラジン型の化合物は生体に利用されないことが判明した。
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