研究概要 |
細胞外マトリックスの一種である基底膜の膜状骨格はIV型コラ-ゲンが形成している。アスコルビン酸がI,III,X型コラ-ゲンの合成,分泌やプロセシンを促進して結合組織を強化することはよく知られていたが,上皮組織のIV型コラ-ゲンに対する作用は研究されていない.今回、脂肪細胞に分化する3T3ーL1におけるIV型コラ-ゲン合成に対するアスコルビン酸リン酸(AscーP)の作用を検討したところ顕著な作用を発見した.その作用は次のようにまとめられる.(1)IV型コラ-ゲンの合成と分泌をともに数十倍に促進した。(2)IV型コラ-ゲンを大きなサイズに変換した.(3)一旦分泌された成熟IV型コラ-ゲンの細胞層への沈着を促進した.このうち、(2)が糖鎖修飾の変化による可能性を検討するために,Nー結合型糖鎖修飾を阻害するツニカマイシンの作用を見たがAscーPのサイズを大きくする効果は消失しなかった.AscーPはIV型コラ-ゲン中のヒドロキシプロリン量を増加させたが,2糖鎖結合部位であるヒドロキシリジン量は増加させなかった.(2)の説明には可変的スプライシングによる新しいIV型コラ-ゲンmRNAの発現も考えなければならない.AscーPの作用はわずかに6時間で観察され,96時間の処理では7μMのAscーPで検出できた.AscーP除去後も、その効果は48時間も残存することも判明した.上記(1)の機構を明らかにするために,AscーPで処理した3T3ーL1細胞の全RNAに対するノ-ザンハイブリダイゼ-ション解析を行ったが,IV型コラ-ゲンmRNAレベルはAscーPで変動しなかった.[ ^<35>S]メチオニンで30分間パルス標識したIV型コラ-ゲンの減衰を追跡したが,AscーPで代謝回転速度は変化しなかった.AscーPによるIV型コラ-ゲン合成の促進によって,3T3ーL1細胞のグリセロリン酸脱水素酵素やリポ蛋白リパ-ゼが早期から発現され,細胞内に大粒の脂肪滴を持つ脂肪細胞が出現することが判明した.
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