研究概要 |
申請者は、放線菌などの多くの真正細菌が複数の主要シグマ因子遺伝子(rpoD homologs)を持つことを初めて明らかにし、特に放線菌Streptomyces coelicolor A3(2)株の4つの遺伝子(hrdA,hrdB,hrdC,hrdD)についてその構造と発現の様相について解析を進めてきた。また、ゲノミック・サザ-ン解析により、大腸菌、緑膿菌ミクロコッカス属、ノカルジア属、コリネバクテリア属、藍藻類などの多くの真正細菌についてもこのような複数のrpoD相同遺伝子の存在を証明した。植物のクロロプラストの起源と考えられている藍藻類の4つのrpoD相同遺伝子(rpoDI,rpoDII,rpoDIII,rpoDIV)については、これら遺伝子領域のクロ-ン化と塩基配列の決定を行った。また、緑膿菌のrpoD相同遺伝子について構造解析を進めた結果、2つのrpoD相同遺伝子の内、一方が大腸菌の主要σ因子と機能的、並びに構造的に相同な蛋白質をコ-ドしていることを示し、この遺伝子をrpoDAと命名した。また、もう一方のrpoD相同遺伝子についても解析を進め、これが大腸菌の第二の主要σ因子と考えられつつKatF蛋白質を機能的、構造的に相同であることを明らかにした。KatF因子は、その遺伝子の塩基配列から推定される蛋白質の構造がrpoD相同遺伝子のコ-ドする蛋白質と構造的に相同性が高いこと、さらに定常状態における特定の遺伝子の発現を正に制御する遺伝子であることが遺伝学的な研究から示されており、主要σ因子として機能していることが予想されていた。本研究の成果は、(1)多くの真正細菌群において2個以上のrpoD相同遺伝子が存在することを示した。(2)藍藻細菌の4つのrpoD相同遺伝子群の構造を明らかにした。(3)緑膿菌の2つのrpoD相同遺伝子(rpoDA,rpoDB)の構造と機能を明らかにした(4)これらの結果を元にrpoD相同蛋白質の基本構造と生物機能についての提唱を行った。
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