研究概要 |
本研究においては、ジベレリン(GA)関連構造を有するフサシダ科のシダの造精器誘導物質の生合成経路を追究するとともに、その受容体追究のための基礎的知見を得ることを目的とした。Anemia phyllitidis、カニクサの主要造精器誘導物質であるantheridic acid、GA_<73> methyl ester (GA_<73>ーMe)については、その構造的相関から9,15ーcycloーGA_9を共通の前駆体とする生合成経路が想定される。そこで、A.phyllitidis前葉体に対し[ ^2H]標識化合物を用いたfeeding実験を行うことにより、antheridic acidが9,15ーcycloーGA_9から3αーhydroxyー9,15ーcycloーGA_9を経て生合成されることを明らかにした。カニクサ前葉体についても[ ^2H_2]9,15ーcycloーGA_9を用いたfeeding実験を行ったが、GA_<73>ーMeへの変換を認めることはできなかった。一方A.phyllitidis、A.flexuosa(antheridic acidが主要造精器誘導物質である)、カニクサの3種のシダの前葉体に含まれるジテルペン炭化水素を検索したところ、3種のシダすべてよりGC/MS法によりGAの前駆体であるentーkaureneが同定されたが、同時にentーkaureneより質量数が2だけ少ない新規ジテルペン炭化水素の存在も示された。後者が、9,15ーcyclokaureneあるいはその類似構造を有しantheridic acid、GA_<73>ーMeと共通の前駆体である可能性も考えられ、現在その化学構造の追究を行っている。更に、カニクサにおける造精器誘導物質の受容体を追究するための基礎的知見を得ることを目的として、10^<ー10>Mで造精器誘導活性を示すGA_4ーMeとその1/10^4程度の微弱な活性しか示さないGA_<20>ーMeの[ ^3H]標識体を用い、カニクサ原糸体のそれら化合物に対する取り込み率を調べたところ、GA_4ーMeの取り込み率はGA_<20>ーMeより約3倍高いことが示された。現在、GA_4ーMeに対して結合活性を示すタンパク質の単離精製を目的として、カニクサ原糸体の大量調製を行っている。
|