研究概要 |
国産材時代の林業生産を具体的に担うであろう地場の林業生産組織は次のように整理して捉えることができる。 ひとつは,自営集団型組織と言えるものである。これら組織らしくない組織は全国に広く分布し、今後においても日本林業の総体としての生産力を支える,いわば日本林業の基底的生産力部分である。林野所有の根幹が農家林家である限り農民的土地経営そのものを構成するものとして存立の根拠を有する。しかし今日的に機能している組織は、林研グル-プや4Hクラブの延長として技術向上や啓蒙活動のプロジェクトが発展したもの,さもなくば,伐採段階への移行に伴って自営性の甦りが間伐や市場対応をめぐってみられる中大規模林家の同族組織である。 第2番目には,各地に生まれつつある機能集団型組織がある。その典型例は、北海道と静岡にみられる林業機械とそれらのオペレ-タを擁する協同組合組織である。林業労働力不足と生産性向上の当面する問題解決が背景にあるが、日本の生産現場に適応した機械化の進展はいわば歴史的法則であり、人工林資源の伐出段階という林業個有の発展経過からも不可避のものである。それが、経営の発展と一体のものではなく機械化部分を分離する形で、政策的にも梃子入れせざるを得ないところに課題がある。 第3番目には、独立事業体型組織を指摘し得る。その数も少なくないが、しかし、必ずしも発展的ではなく,上記2つの組織が捕捉し得ない部分を拾い集めるような形で機能している。クレ-ン付トラックの開発による集運材労働力編成の再編が事業体としての自立化の根拠にある。しかし事業体利潤の源泉は、外材による価格支配構造の下で、短期的市況変動に対応した小回りのきく立木購入の行動様式か、あるいは個人としての労働力の自立化を要求しない夫婦2人の労働力編成である。
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