研究概要 |
本研究は,一つは北米における育成的林業の成立過程と,それの採取的林業との併存構造を解明し,木材の対日輸出の経済力を問うこと,あと一つはその結果として,それが日本国内でどのような問題を生んでいるか,とりわけ日本林業との競争関係を解明することであった。明らかになった点をあげると以下のようである。 1. 北米における採取的林業から育成的林業への展開は,old growthの生産から second growth の生産へ移行しつつ,その過程でアメリカ国内市場における地域問競争の激化と対日輸出の拡大をよんでいる。 2. また一方,old growthの生産は環境保護を求める動きのもとで制約を受け,国公有林の生産規制へと発展している。その結果,輸出は木材企業(紙パルプ多国籍企業)の売り手独占的な構造になり,比較優位をより確実なものにさせている。 3. しかも,80年代半ばからの円高ドル安移行とその定着は,製品輸入に中心を移しつつ,より外材化を進めた。それが日本の国内自給率を4分の1段階へといっそう後退させる結果になっている。 4. しかし,円高現象は日本の企業の海外活動を活発化させた。日本の紙パルプ企業の北米企業の工場買収や,経営参加,さらには発展途上国における植林など新たな動きが展開した。製材企業や木材問屋の中にも海外投資を展開する企業が現れた。 5. こうした外材中心の市場体制のもとで日本林業は後退傾向を強めているし,建築用の木材市場をみたとき輸入製品,国内挽き製品,国産材製品の三者が激しく競争を展開している。この中で日本の森林資源の管理の在り方が問われている。
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