労働力の減少と木材価格の低迷のため、間伐や枝打の遅れが著しい。また環境保全の観点から、択伐作業も増えつつある。このような状況から、伐倒時の懸り木が大きな問題となっている。 懸り木を生じさせる要因には、立木の密度や配置、高さ、枝の長さ、配置、強度、そして樹冠を構成する枝葉同士の接触抵抗力などがあるが、このうち枝の働きが最も重要だと考えられる。枝は単に一本一本の破壊強度だけではなく、その大きな弾力性によって懸り木の際に簡単には折れないために、多数の枝が互いに接触することになり、これが大きな摩擦抵抗力を生み出す効果をもっている。本研究では主としてスギを対象として、懸り木との関連から枝の力学的特性を実験的に検討した。 枝は直径1cm以下の細いものが多いため、剥皮を施しただけで材料試験に供することにした。従って横荷重によりつぶれやすいから、曲げ試験では支点における材料の凹みを相殺できるような方法を採用した。 生きた枝は、予想どおり大きな弾力性を示した。興味があったのは、枝の先端よりも樹幹に近い太い部分がいくらかではあるが、弾力性が大きかったことである。すなわち、先端の細い部分は含水率が高いにもかかわらず、太い部分よりも大きな曲げ弾性係数を示した。圧縮試験においてもほぼ同様の結果となった。ただしいずれも秋から冬にかけての測定であるので、季節を変えて確かめる必要がある。死枝と半死枝は含水率も低く、弾性係数も高いのは当然といえるが、破壊強度については生枝と差がなかった。死枝、半死枝は樹幹の比較的低い位置に存在することが多いためと、この弾力性に乏しいために、懸り木の原因にはなりにくい。 枝の各部の強度と負荷時のたわみを求め、枝の配置と関連づけて懸り木になる条件を確定すべく検討中である。
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