研究概要 |
土工作業熟練者と数多くの未熟練者のかんな削り動作をバイオメカニクス的に動作解析を行い,この動作形態を類型図で分類することとした。木工作業熟練者のかんな削りの技能の巧みさは,削り始めのかんな身刃先の位置,構えの身体位置,左右両腕の上腕三頭筋と長掌筋の押さえる力と引く力のバランスのとれた筋作用,そして,腰の大きな水平移動による動作,さらには,削り終わりのかんな身刃先の正確な制止位置など,それぞれのかんな削り動作の動作過程の各段階において卓越した技能が科学的に把握することができた。 この熟練者の動作と比較しながら未熟練者のかんな削り動作を分類するために,以下に示すような5つの分類項目を設定した。(1)削り始めの被削材先端とかんな身刃先や下端面の位置関係。(2)被削材末端と身体の構えの位置関係。(3)左右両腕により,かんなを押さえる力と引く力が均等の作用しているか否かの関係。(4)かんなの引き動作における腰の前後水平移動距離。(5)削り終わりの被削材末端とかんなの身刃先や下端面の位置関係。これらの分類項目よりなる類型図を使用して未熟練者を分類すると以下のようになる。学習前においては未熟練者が共通して,(1)の項目では,被削材先端に「削り残し部」を生じる。(2)の項目では,構えの位置がやや前方である。(3)の項目では,左右両腕の押さえる力と引く力がアンバランスである。(4)の項目では,腰の水平移動距離が小さい。(5)の項目では,かんなが後方へ大きく流れる。以上のような特徴が認められた。学習後においては,(3)の押さえる力と引く力の左右両腕のバランスや(5)のかんなの被削材末端での制止位置などでの学習効果は認めにくかった。以上のような未熟練者と熟練者を類型図上でかんな削り動作を比較することにより,動作の分類を未熟な点を明確に認識でき,指導方法改善の視点が明らかになった。
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