栽培漁業における放流効果の判定手法を見いだす目的で、魚の行動を精密かつ自動的に長期間測定し解析するバイオテレメトリ-法を開発している。今回は以下の項目について新な知見を得たので報告する。すなわち、信号の受信を確実なものとして精度を向上させたこと、測定範囲を拡大したこと、多数の魚を長期間同時に測定するための基礎デ-タを得たことの3点である。 これらの点に関し、三重県の方座浦と島勝にて、シマアジやウマズラハギの行動調査を行った。その結果、海中の超音波雑音や空中の障害電波の濾波に問題があることがわかった。これらの雑音や電波は、いずれも持続時間が短いパルス波の集まりであった。そこで、発信する信号の持続時間を十分長くとり、受信の際に信号の持続時間を計測する回路を開発した。さらに、音圧比較回路と信号の回数を数える回路を組み込んで精度の向上を達成した。また、熊本県天草にてシマアジの行動調査を実施した結果、供試魚は比較的短時間で試験海域を離れた後、約半日経って再び同海域へ接近した。そこで、測定範囲を拡大するため、受波器にパラボラ型反射器を取り付けたハイドロホン2台をさらに付加したところ、受信距離をこれまでの約5倍にあたる半径1300mに広げることができた。 次に、多数の魚を長期間同時に追跡するためには、ピンガ-の装着手法の検討が必要である。小型魚では、曳航式が簡便で装着時のダメ-ジも少なく比較的好成績であったが、1〜2週間以上経過すると傷口が拡大する欠点があった。外科手術をしてピンガ-を腹腔内に埋め込む方法も新しく採用してみると、傷は外見上約1週間でふさがり、長期間の実験には非常に有効な手段であることがわかった。
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