研究概要 |
経口抗凝血薬ワルファリン・カリウムをコイに10〜14日間定量的に経口投与し,活性部分トロンボプラスチン時間(APTT),プロトロンビン時間(PT)の変化を調べた。また,ワルファリンとビタミンK_3を同時に投与しワルファリンに対するK_3の拮抗作用を調べた。ワルファリンを魚体重1kg当り2.0mg投与したコイではAPTT,PTともに延長し,K_3を同時投与しても凝固時間の延長は阻止されなかった。ワルファリンのみを魚体重1kg当り1.0mg投与した場合はAPTT,PTともに延長したが,K_3を魚体重1kg当り0.1〜1.0mg同時投与するとPTの延長は阻止された。しかし,APTTの延長は阻止されなかった。この事実からK_3のワルファリンに対する拮抗作用は内因性凝固系と外因性凝固系では異なることが示唆された。なお,ワルファリンのみを魚体重1kg当り0.5mg投与したコイでは凝固時間の延長は認められなかった。 また,HPLCによる血漿中のビタミンKの測定条件を検討し,ビタミンK_2(メナキノン-4)を用いて血漿中の動態を調べた。平均体重230gのコイにK_22.0mgを筋肉注射した場合、血漿中濃度は1時間後に6.02Mg/ml、6時間後に1.56Mg/ml,24時間後には検出限界以下となった。一方,K_2を2.4mg経口投与した場合はK_2のピ-クは出現せず,6〜8時間後にリテンションタイムの異なる数種類のピ-クが出現した。この事実から経口投与した場合は消化管からの吸收過程でK_2が数種類の誘導体に変換されることが示唆された。なお,今回用いた測定方法によるK_2の検出感度は血漿中濃度として250ng/mlであったが,通常状態のコイ血漿からはビタミンKは検出できなかった。従って,コイ血漿中のビタミンK濃度は著しく低いと推察され,さらに検出感度を10〜100倍程度高める測定条件を見出す必要がある。
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