研究概要 |
フグおよびイモリにおけるフグ毒(テトロドトキシン,以下TTX)の起源を外因性と仮定し,TTXの起源と代謝に関する以下の研究を行った。1.フグが捕食するかも知れない三陸沿岸産各種無脊椎動物27種について毒性スクリ-ニングを行ったが,いずれからも毒は検出されなかった。2.フグの体内におけるTTXの挙動を調べる手段としてカニュレ-ションにより無毒の養殖フグ血管内にTTXを投与し,血中におけるTTXの消長を調べたところ,血中TTXは投与後1時間までに濃度を急激に減じ,12時間以降は痕跡的になることから,TTXは速やかに減少し,各臓器に蓄積されるものと推察された。3.TTXの蓄積・排出状況を調べるため,無毒の養殖フグの腹腔内にTTXを投与後,経時的に臓器組織のTTX濃度を調べた。TTX量は12時間後まで,投与量の約半分にまで減少したが,それ以後はほぼ一定となった。TTXは筋肉には蓄積しにくく,大部分は肝臓に蓄積された。4.イモリの生息する沼の周辺においてイモリが捕食すると考えられる餌生物の毒性スクリ-ニングを行った。カワニナ,ミズカマキリなど数種の毒性を調べたが,いずれからも毒は検出されなかった。5.イモリの毒性には著しい個体差があるが,地域による差異もあることが分かり,何が地域差を生じさせているのかについて検討した結果,標高も影響するとの示唆を得た。6.天然イモリの成長に伴う毒性の変化を追跡したところ,幼生の毒性は低く,成体の毒性は高かった。亜成体の毒性は不明である。人工飼育イモリの毒性がどうなるかを知るため受精卵からイモリを飼育し,成長に伴う毒性の変化を追跡した。7.動物のTTXに対する抵抗性を調べる過程で,イソガニの体液中にTTXと反応し,抗TTX作用を持つ高分子成分のあることを発見した。従来のTTXの研究の中で起源と解毒法の二つが未解決の問題であるが,この発見は後者の解決につながる研究である。
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