研究概要 |
ガス置換包装は従来の冷蔵と併用することにより,大幅な貯蔵期間の延長が期待される貯蔵法であるが,魚介類の貯蔵性と安全性に関しての微生物面からの研究は殆んどない。本研究ではマイワシフィレ-を用いて,主に貯蔵中の細菌相変化と開封後の微生物の挙動を調べ,また,分離菌株と食品衛生細菌の増殖に及ぼすガス組成の影響について検討した。主な結果は以下の通りである。(1)新鮮なマイワシフィレ-を3種のCO_2・N_2混合ガス(CO_2:N_2=70:30,50:50,20:80)で充填包装し,5℃貯蔵した際のシェルフライフは,対照区(含気区)で1〜1.5日,ガス置換区ではともに4日であった。生菌数は好気・嫌気菌ともガス置換区で抑制効果があった。細菌相は対照区ではPseudomonas(80%),Vibrio(20%)が優勢であったのに対し,ガス置換区ではAeromonas(70〜95%)が優勢であった。また,ガス置換試料のうち1試料区(CO_2:N_2=50:50)を貯蔵後4日目で開封し,含気包装し直した場合の生菌数変化は対照区の場合と類似した傾向を示し,その細菌相はPseudomonas(85%)およびAeromonasが優勢であった。(2)上記の貯蔵試料より分離した代表菌株21株の増殖に及ぼすガス組成の影響を調べた結果,貯蔵開始時および対照区から分離したPseudomonas,Vibrio,Moraxella,Acinetobacter等はCO_2を含む気相下で増殖が抑制され,一方ガス置換区14日目試料から分離したAeromonas,Lactobacillus等はCO_2の影響を殆んど受けなかった。(3)食品衛生細菌をコンポジット魚肉に接種し,その増殖に及ぼす各種組成の混合気の影響を調べた結果,腸炎ビブリオ,サルモネラ,ブドウ球菌,大腸菌はいずれもCO_2存在下では増殖抑制を受けたが,大腸菌とサルモネラはN_2によっては殆んど影響を受けなかった。
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