研究概要 |
魚類の骨格形成と酸性ムコ多糖の関係を知るために,ニジマスの硬骨(脊椎骨)と軟骨(篩骨)の酸性ムコ多糖の含有量及びその組成を比較した。ニジマスの稚魚をビタミンC週欠乏飼料及びC添加飼料で飼育して脊椎骨中の酸性ムコ多糖の量的変化及び質的変化と骨格形成異常との関係を調べた。軟骨では酸性ムコ多糖の含有量が高く脊椎骨の約10倍であった。軟骨の酸性ムコ多糖はその約80%が非硫酸化ムコ多糖であった。その65%はコンドロイチンで,残りはグルコサミンを含有するヒアルロン酸であった。脊椎骨の酸性ムコ多糖はコンドロイチン硫酸が主体(約74%)であった。脊椎骨では非硫酸化ムコ多糖の含有量は痕跡程度であった。ニジマスの稚魚をC欠乏飼料で飼育した結果,全魚体から抽出した酸性ムコ多糖は対照区に比べコンドロイチンとヒアルロン酸が多く,コンドロイチン硫酸が少なかった。脊椎骨の酸性ムコ多糖含有量は,飼育10週目には対照区のそれとかわらなかったが,変形魚が発生した飼育15週目には著しく高くなった。飼育15週目のC欠乏区ではグルコサミンを含有する酸性ムコ多糖,ヒアルロン酸の含有量が高かった,コンドロイチン硫酸のコンドロイチン6ー硫酸4ー硫酸の存在比率は両飼料区間でほとんど変わらなかったが,酸性ムコ多糖のガラクトサミンと硫酸のモル比からC欠乏区では対照区に比べコンドロイチンが多く,C欠乏によってコンドロイチンの硫酸化が阻害されていることが分かった。以上の結果から,ニジマスではC欠乏が進行すると脊椎骨の酸性ムコ多糖の組成および性状が軟骨のそれに近くなることが分かった。
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