研究分担者 |
新沼 勝利 東京農業大学, 農学部, 助教授 (60078160)
藤本 彰三 東京農業大学, 総合研究所, 助教授 (80147488)
小野 功 東京農業大学, 農学部, 助教授 (20078166)
太田 保夫 東京農業大学, 農学部, 教授 (00213744)
松田 藤四郎 東京農業大学, 農学部, 教授 (90078121)
|
研究概要 |
本研究は,水稲直播栽培に焦点を絞り,日本稲作における技術・経営革新の可能性と方向性を実証的に明らかにすることを狙いとして実施された。直播技術には,乾田,湛水土壌中および折吏直播などの諸形態が存在するが,これらは地域的並びに個別農家の条件によって規定されている。本研究では,これらの異なる形態の直播技術の特性を解明するため,日本における代表的な水稲直播栽培の実態を調査した。実態調査を行った地域は,静岡県大東町,磐田市,福井県坂井町,春江町,富山県富山市,立山町,福野町,岡山県岡山市などである。これらの地域では,岡山市の乾田直播栽培を除き,他はすべて湛水土壌中直播が行われていた。 本研究で明らかとなった主要な点を述べると,第一に地域性を考慮することの重要性である。同じ湛水土壌中直播の技術でも,表日本と裏日本,暖地と寒冷地では技術対応に大きな差がみられた。また、地域間の直播栽培をめぐる社会経済的条件の相違も大きく,静岡では施設野菜による複合化や兼業化による稲作の省力化が直播栽培導入の直接的な目的となっていたのに対し,北陸地域の直播はコシヒカリなどの優良品種でしかも高収量を達成していかないとその定着が困難であった。したがって,現在ではそうした高度な直播技術体系を確立するとともに、農家がそれを容易に導入できるような条件整備が不可欠と思われた。第二に,今日米の需要が高品質米へ確実にシフトしている中で,稲作農家としてもそれに対応した高品質・高収益の方向で対応しようとする動きが急速に進み,直播栽培の導入に大きな問題を提起している。たとえば,静岡県磐田市での直播栽培の急速な減少の背景にも,高収益を狙った早期コシヒカリの導入と水利問題があった。いずれにしても,本研究は,直播栽培の導入をめぐる技術と経済との相互依存関係を実証的に解明し,今後の水田農業研究に新しい視角を構築した。
|