研究概要 |
本邦に分布する新第三紀層泥岩は通常,堆積粘土とは異なる圧縮・剪断挙動,風化による短期間の著しい劣化などを示し,農業土木構造物の建設並びにその維持管理を行う上で問題となることが多い。このような軟質泥岩特有の工学的性質に関与している膠結作用を明らかにするため,沖縄島中南部地域に分布する島尻層泥岩について遊離の鉄酸化物,非晶質のシリカとアルミニウム酸化物,炭酸カルシウムをそれぞれ選択的に溶脱させ,(1)溶脱中の変形挙動,(2)溶脱に伴う団粒分布の変化,(3)溶脱に伴う圧縮・膨張・せん断特性の変化を調べ,膠結物質の特定とその機能について検討した。得られた結果は次のとおりである。 (1)遊離の鉄酸化物の圧密圧力6.4kgf/cm^2での溶脱中には膨張変形が生じ,溶脱による団粒の細粒化および圧縮性と膨張性の増大が認められ,遊離の鉄酸化物は膠結機能を有し,団粒内の膠結に強く寄与していることが推定された。 (2)非晶質のシリカ,アルミニウム酸化物の圧密圧力6.4kgf/cm^2での溶脱中には圧縮変形がややみられ,溶脱による団粒の細粒化と圧縮性・膨張性の増大が認められ,非晶質のシリカ・アルミニウム酸化物も膠結機能を有しているが,これらは団粒内ではなく,団粒間の膠結に寄与しているものと推察された。 (3)炭酸カルシウムの圧密圧力6.4kgf/cm^2での溶脱中には圧縮変形が生じるが,溶脱による団粒分布や膨張性の変化はあまり認められないことから,炭酸カルシウムは膠結物質としてよりも,むしろ単一粒子あるいは団粒の構成粒子として泥岩の構造形成に関与していると考えられる。 (4)膠結作用により圧密降状応力と有効応力表示の粘着力(剪断強度定数)は増大し,圧縮・膨張・剪断の各変形抵抗が強められていることが分かった。
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