研究概要 |
自脱コンバインに使用される穂先供給式の脱穀機(以下自脱という)は動力消費が少なく,脱穀品質は優れているが,稲以外の作物への適用性が乏しく,大型化しにくいことが欠点である。本研究は制御技術をフルに活用することにより穂先供給式脱穀機の欠点を改善し,汎用性があり,しかも動力消費の少ない脱穀法の開発を目的にしている。汎用性の高低の検討のため,稲と麦を本研究の対象作物として,稲は麦の物理特性を実測した。稲の穂先は多数に分岐した柔らかな枝梗に質量のある穀粒がついた形状をしている。この稲の振動特性を解析するため,分岐系の振動解析に適した伝達マトリクス法によるプログラムを開発し振動解析を行った。また,質量,茎,枝梗の剛性にばらつきによる振動特性の変動を線形偏差解析法により解析し,ばらつきによる影響は少ないことを確認した。次に,先に報告した脱穀理論に基づいて,自脱に制御を加えた場合の性能向上の可能性について検討した。この結果自脱は制御対象として適しておらず,自脱に制御機能を加えても多くの性能向上は望めないことを明らかにした。このため,新たに制御を実施することにより,汎用性と処理能力の向上が計れる脱穀機を構想し,これに基づいてこれを実現するための新型脱穀法の研究とセンシングデバイスの開発を兼ねて円盤型脱穀機を試作して実験を行った。この結果,理論的に自脱と同条件を与えれば自脱と同性能の脱穀が行えること,実験機段階では正常な脱粒の場合と,穂切れにような異常な現象が生じた場合の検出が可能であり,センシングデバイスとしての役割が果たせることが確認できた。また,この時作用する力については,実測値と計算値が一致することも確認でき,脱穀理論に基づいて脱穀機の設計が行えることを明らかにした。本研究により今後開発を予定している実機の開発に必要な多くの知見を得た。
|