研究概要 |
この研究は,画像処理による青果物の損傷果検出の作業を自動化する目的で,モモ等を対象にその分光反射特性を可視領域と近赤外領域にわたって調ベ,損傷果検出に適する光学フイルタを選定し,カラーカメラと赤外カメラを用いた画像処理システムを構築し,果実表面の正常部と損傷部とのカラー画像色度と近赤外画像濃度値に基づいて,果実の傷検出の可能性を検討した。その結果,実用化への見通しが確立された。 実験結果の主なものは次のとおりである。 (1)青果物における表面色の差による分光反射率の差は,可視領域において顕著に現れるが,近赤外領域においては,その差は小さくなる。 (2)ナシ,リンゴ共に,圧縮損傷による分光反射率の差は,他の損傷に比べて小さい値である。 (3)画像処理を目的とするための分光反射特性は,その標準偏差により表示する必要がある。 (4)リンゴ,なしの損傷果の検出を対象とする波長は,可視領域に近い赤外領域の波長を用いることにより可能となるであろう。 (5)モモの傷検出には,近赤外画像を用い,判別しきい値法と領域・エッジ併用法で傷の抽出を行っている。 (6)近赤外画像では,中心波長が850nmが適する。 (7)モモの腐り,虫害,傷痕,裂果等の損傷画像の抽出については,判別しきい値法が有効である。 (8)明確な輪郭のある傷(虫害,傷痕及び裂果等)に対して,領域・エッジ併用法が有効であった。また,傷の面積と傷画像濃度は関係がなく,傷画像抽出の精度も高い。 この実験を通して,両方法共果柄部と果頂部の窪み及び縫合線の部分の検出の検討をすることにより,より実用化に近づくものである。
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