研究概要 |
植物や地表面からの蒸発散は,その土地の局地的な環境を支配する要因の一つである事に加えて,全地球的な気候を左右する大気現象の重要な境界条件を与える量である.現在開発されている気候変動モデル,局地循環モデル,さらに地表のエネルギ-収支モデルには,蒸発散は主要な要素として取り入れられている.ただし,蒸発散をパラメ-タ化する場合には植物の表面や地表面の湿度の情報が必要である.ところが表面そのものの湿度を示す手段が無く,表面が十分に湿っているなど不明確な仮定に基づいた評価がなされている場合が多い.この所研では,現実の植物などの表面からの蒸発,蒸散のバルク係数が,その表面が十充に湿っていると仮定した場合の係数に対してどの様な関係に有るのかを示す係数,蒸散効率および蒸発効率を求める事を試みた. 実験は,サトイモの群落および針葉樹林を対象として行った.サトイモからの蒸散は重量変化の測定を連続記録して行った.大気の温度湿度の分布の測定は通風乾湿計によった.葉面の温度は熱電対温度計を用いた.群落からの熱輸送には超音波風速計と抵抗線温度計を用いた.森林からの蒸発散の測定には超音波風速計と細い熱電対の乾湿計の組み合わせによる渦相関法を適用した.測定結果を基にして蒸散効率を求めた結果,1)蒸散効率は,天気の良い日には正午過ぎ頃に最大値を取り,その値は最も大きい場合は1.0に近い値となるが,小さいときには0.5程度まで落ち,平均的には0.7である,2)蒸散効果は朝夕には非常に小さな値,0.1程度まで下がる,ことが明らかとなった.この事から,葉面からの蒸散をバルク法によって求める場合,葉面の湿度として葉温での飽和水蒸気圧を用いた場合には,時間帯によっては著しい過大評価となることがわかった.
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