研究概要 |
本研究は,反芻家畜の牧草消化に対する牧草無機成分,とくに可溶性ケイ酸(Si)及びカルシウム(Ca)の役割を追究する目的で,まず,繊維分解酵素セルラ-ゼ(Cーase)活性に及ぼす両無機成分の関与について,牧草の消化率を指標にして検討した.つぎに,暖地型イネ科牧草の物理・化学処理と消化率及びSi含量との関連についても追究した.供試牧草はオ-ストラリアで収集した消化率が類似でCa含量の異なる6種類のパンゴラグラス(Pg)と九大圃場で栽培したグリ-ンパニック(Gp),ロ-ズグラス(Rg)とギニアグラス(Gg)である.主要な研究成果は次のとおりである.1.牧草Caの2.5%Cーase液による溶出:供試草Pgのin vivo有機物消化率(OMD)は40.9ー52.2%,Ca含量は0.13ー0.47%であったが,48時間培養により84.7ー95.0%のCaの溶出を示した.2.牧草OMDに対するSiとCaとの関連:Cーase液(1.25%と0.65%)にSi及びCaを600及び1200ppm添加し,人工消化試験を行った結果,供試試料のOMDはSi濃度の上昇に伴い低下する傾向を示した.Ca添加の場合もCa濃度の上昇に伴いOMDは低下したが,Si添加の場合よりも若干低い値が認められた.SiとCaをそれぞれ600ppm添加した場合のOMDは,いずれか一方を1200ppm含む場合のほぼ中間値を示した.また,Si及びCaによる牧草消化能の抑制効果はCーase濃度の低い培養液で大きくなることが認められた.3.暖地型牧草の物理処理による乾物消化率(DMD)とSi含量の変動:Rg,Gp及びGgを蒸煮処理(180℃・10分間)し,山羊第一胃液による人工消化試験を行った結果,Siは減少しDMDは上昇することが示された.4.暖地型牧草の化学処理によるDMDとSi含量の変動:Rg,Gp及びGgについてアンモニア処理(3%・4週間)または水酸化ナトリウム処理(9%・24時間)を行った結果,Siは減少し,山羊第一胃液によるDMDは無処理牧草のDMDよりも上昇することが示された.
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