研究概要 |
草地土壌の理化学性にもっとも関与してくる因子は“牧草根群"である。草地としての土地利用は密生作物である牧草を永年的に栽培することであるから,いったん草地造成されると,耕起などの物理的作用が土壌を変化させることは少なく,牧草根という生物が生きたまま,あるいは老朽・枯死した後まで様々なかたちで土壌に関与してくる。これまでの研究をとおして著者らは,牧草根が土壌の理学的性質を変える場合と,土壌が牧草根の生育形態を変える場合とがあることを究明してきた。そこで,この牧草根群の特長を積極的に評価することで土壌保全の役割をもたせようと試みているが一連の研究テ-マのねらいである。 この一連の研究の一部としてここでは,牧草根群が土壌の構造形成に関与するメカニズムを検討した。結果の概要は以下のとおりである。(1)永年草地の地表面には約2cm厚のル-トマットが形成されるが,このル-トマットの内容物は枯死根など従来から指摘されている牧草残査物の他に多数の活性根も含まれている。そこで著者らは,ル-トマットの構成をR層(R+S)層,S層の三層に区分し,R層は牧草の活性根と位置づけた。(2)イネ科牧草の茎茸部が繁茂しつづけると,地表面に多数の白色新鮮根が発生,発達することを実際の永年草地で確認できた。著者らはこの根を“地表根"と仮称。(3)“地表根"発生メカニズムを知るためにマルチ法による発生試験をおこなった。その結果,i)地表面の日射がほとんどない,ii)地表面の湿度が100%,iii)根の伸長を妨げる物理的障害物が存在しない。などの諸条件が充たされた場合に地表根発生・発達が可能。(4)“地表根"の外部形態を調査した結果,根径において普通根との大きな差異が認められ,地表根は普通根の2次3次根に相当する太さしかもたない。(5)この“地表根"によってル-トマットR層が形成され草地土壌構造の形成に特異的な役割を呈するものと推察した。
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