研究概要 |
畜肉の生産改善にとって食肉の実質体である筋肉蛋白質の蓄積量,すなわち,分解量,合成量とその制御機構を明らかにすることは重要である.ヤギは肉用および乳用牛の両方の実験動物として有用であるが,報告者らはザ-ネンヤギにおける非侵襲法である尿へ排泄される3ーメチルヒスチジン(3MH)量の筋肉蛋白質分解の指標としての有効性を検討してきた.その結果はこの手法の有用性を示すものであったが,3MHの代謝産物については未検討であった.本研究はこの点を明らかにしようとした. 3ヶ月齢のザ-ネン雌ヤギ(体重13.5kg)2頭を用いた.1頭当たり20μCi〔^<14>Cーメチル〕3MHを投与後,6日間1日尿を採取した.代謝産物を調べるために,加水分解前後の尿試料をアミノ酸分析機で分離してそれぞれの画分の放射能を測定した.3MH代謝産物の検出に,購入された検出器が使用された. 代謝産物はすくなくとも3種類検出された.その1つは,アミノ酸分析機における溶離位置がNーアセチルー3MHと同一であり,加水分解によって減少することからNーアセチルー3MHと推定された.これらの分布量は,Nーアセチルー3MHが3.2%,他の2つがそれぞれ4.7,1.4%であった.Nーアセチルー3MHがヤギにおける3MHの代謝産物であることを明らかにしたのは本報告が初めてである.しかし,Nーアセチルー3MHの他にも少なくとも2種類の代謝産物の存在が示されたので今後これらの分離同定,分布量,役割を更に明らかにする必要性が示唆された.
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