研究概要 |
細胞間マトリックスタンパク質は動物細胞の増殖、機能分化および臓器の構築に関わっている。同タンパク質には架橋構造が存在して機能を発現するが、これは複雑な構造を持つことで知られる架橋アミノ酸によって構築される。異常架橋に起因する多くの疾病のほか、加齢や糖尿病により、架橋構造が干渉を受けるため、架橋構造の解明は重要である。 本研究において、今回新たに"アロデスモシン"と名称付けた1,3,4,5位に分岐した四級のピリジニウム環式架橋アミノ酸を牛大動脈および肺エラスチンから分離し、その構造を明らかにした。このアミノ酸は分子量が655であり、既知タンパク質の構成アミノ酸では分子量が最大である。同アミノ酸はアルド-ル縮合反応を重要な中間体として、生体内における合目的的な反応により生合成されると考えられた。そこで、エラスチンにおけるアルド-ル架橋アミノ酸の分離を試み、世界で初めてアルドシンと名ずけたアミノ酸を分離同定し、アロデスモシンの予想生合成反応機構の実証に成功した。さらに、アルド-ル架橋のモデルとして2ーメチルー2ーペンテナ-ルを用い、一級アミンとの縮合反応を行い、1,2,3,5ーおよび1,3,4,5ー位に分岐した各種の含ピリジニウム環化合物の生成することを認め、アロデスモシンの生成機構の一端を明らかにした。アロデスモシンの分離は極めて困難であったが、その分離に活性炭を用いる方法を開発し、本方法により将来医療応用に資すると考えられる、架橋アミノ酸の調製法も開発することが出来た。畜産動物体内のアロデスモシンの分布はカウンタ-イオンを用いたODSカラムにより分離ができたので、定量を試みたところ、牛の組識別エラスチン間に、含量の差異は検出できなかった。生体防御作用の見地から四級ピリジニウム化合物の抗菌性を調べた結果、抗菌性は炭素数により強く影響されることを明らかにした。
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