研究概要 |
マウス肝炎ウィルスJHM株のプラック変異株JHMー1a,JHMー2Cのマウスの中枢神経系に対する病原性をin viroおよびin vitroで検討した。両変異株10^4PFUを4週令ICRマウスに接種するとJHMー1a接種マウスは接種後7日以内に30%が斃死したがJHMー2c接種マウスは全例生残した。前者ではウィルス価は親ウィルス同様に高い値を示したが、後者では低い値であった。 JHMー1aは接種マウスでは感染初期には軽度の脳脊髄点を示し,ウィルス抗原は神経細胞および希突起膠細胞に分布していた。両細胞の融合も認められた。また両ウィルス接種マウスに持徴的な脱髄も認められた。 電子顕微鏡で観察すると、ウィルス感染希突起膠細胞の細胞質に顆粒集合物吠封入体が明瞭に認められ,ウィルス抗原陽性であった.これらの封入体を有する希突起膠細胞に関連しているミエソン鞍の崩壊も観察された。ウィルス接種4週後にも同様にウィルス抗原が検出され,脱髄も認められた。 次に,これらの変異株をマウス脊髄初代培養を用いて病原性を調べた。MHVーJHMーlaおよびJHMー2Cをマウス脊髄初代培養に接種するとグリア細胞および神経細胞内に,12ー24時間にウィルス抗原が認められた。これらウィルス抗原は細胞内に止まらず細胞表面にも認められた。JHMー1aでは小融合細胞が形成され、大形封入体の形成もあったがJHMー2C接種細胞では抗原量が少く,細胞変性も明確ではなかった。 これらの所見から,これらウィルスは希突起膠細胞に親和性を有し,この細胞内に持続感染すること,脱髄はその結果として生ずることが明らかになった。また、親ウィルスには病原性が異るいくつかの亜株が存在し、各種病変を作ることが示された。
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