研究概要 |
乳酸脱水素酵素(LDH)ウィルス感染慢性相のマウスでは,大腸菌由来リポ多糖類(LPS)の注射による局所の腫脹が,非感染(対照)マウスに比し弱く,組織学的に好中球,単球性細胞浸潤が微弱であった。チオグリコレ-ト(TGC)腹腔内注射で誘導される腹腔滲出好中球とMΦの数は,感染,対照間に差はなかった。LPS腹腔注射では15時間後に感染マウスの腹腔好中球数は対照に比し少なく,96時間後に好中球,Mφとも著しく少なかった。また誘導好中球とMφの走化能は,好中球では感染,対照間に差はなかったが,Mφでは感染マウスで低下した。誘導Mφのインタ-ロイキンー1(ILー1)産生は感染マウスで低下がみられた。 感染および対照マウスからのMφによるILー1の産生はインドメタシンとLPSを処置することにより増強され,いっぽうマウスに対するインドメタシンをLPSの腹腔内注射は,感染,対照両マウスに腹腔内滲出好中球の増加をもたらした。これらのことから,感染マウスではプロスタブランジンの過度の活性化がMφによるILー1の産生でいてはエンドトキシンで起こされる好中球動員の減退を来たすと考えられた。 つぎに感染マウス末梢血中の感染性ウイルス一抗体複合体のMφ走化能抑制の可能性を調べた。感染マウス循環血中ウイルス感染力は,抗マウス1gG家兎血清により急性期には影響なく,慢性期では消失した。対照マウスMφの走化能は対照血清で抑制されず,感染マウス血清で抑制された。また抗マウス1gGヤギ血清,抗マウス1gGーFC家兎血清処置で感染マウス血清の走化能抑制作用は解除された。すなわち感染性ウイルス一抗体複合体によるMφ走化能の抑制が示唆された。
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