研究概要 |
ホロホロ鳥の下垂体前葉全体には他の鳥と異なり大型の濾胞構造が存在していることを報告してきた。この濾胞構造が所謂甲状腺の濾胞と類似していることが示唆された。画像解析システムLA-525Rにより,各切片を用いて濾胞の分布を調べると,組織切片において索状に見える細胞の配列は,中央の濾胞腔を取り囲んだ数層の前葉細胞の集団の断面を示すことが判明した。また,三次元画像解析を行なうと,このような細胞集団の外形は濾胞腔の形に応じて球形から円筒形をとり,これらの球もしくは円筒形の各細胞集団は不規則なY字型あるいは樹枝状に分れて,隣接の集団と連なり,複雑な網状構造を形成している。しかし,濾胞腔は球もしくは円筒形であると共に,いずれも前葉細胞の集団内に盲嚢を形成し,この内腔が隣接する濾胞腔と直接交通するようなことはなかったが,Y字に分枝していた。濾胞腔の形は矢状断で円あるいは楕円形が多いが,立体的には球もしくは両端が盲端に終わる円筒形であり,大きさは大小様々であったが,中には短径30μ,長径1mmに達する大型のものも見られた。また,濾胞腔を取り囲む前葉細胞の配列は,濾胞腔に面して比較的整然と配列されていることが判明した。濾胞を構成する分泌細胞は顆粒の大きさと形態から同定すると各種の分泌細胞が混在していた。このことは去勢による濾胞構成細胞の同定によっても確かめられた。トリパンブルーを使用した濾胞星細胞の形態と機能の検討から,濾胞星細胞は濾胞腔壁を形成し,細胞質突起を基底膜側に伸展し,各分泌細胞をその突起で取り囲み,濾胞の支持,栄養,分泌顆粒の移動およびホルモン分泌に深く関与していることが判明した。濾胞腔の自由縁にはマイクロビラエが見られ,マイクロアポクリン分泌像も認められた。以上のことから鳥類の下垂体の前葉は濾胞が前葉機能の最小単位を代表することが判明した。
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