研究概要 |
鹿児島県下各地で飼育されている黒毛和種牛に,治癒困難な血腫の発生を主微とする血液凝固不全性疾患が見られる。この疾患は血小板凝集能に障害のあることが,申請者らのこれまでの研究によって明らかになった。本研究の目的は,この疾患が血小板放出能異常症の一種,δー貯蔵プ-ル病(δーstorage pool disease)であることを確認することである.血小板は凝集するときATP,ADP,Ca,セロトニンなどを放出する.本研究では,今回の補助金により購入したルミアグリゴメ-タ-を用いて,血腫の発生した牛と正常牛において血小板凝集時のATPとADPの放出量を測定した.その結果,血腫牛では正常牛に比較して,凝集時に血小板から放出されるATPとADPの量が有意に低下していることが判明した.このことは,本疾患がδー貯蔵プ-ル病であることを,さらに裏付けるものであった.さらに,血小板の電子顕微鏡による微細構造の検索では,血小板の内部構造の1つであるdense bodyが,δー貯蔵プ-ル病では正常な血小板より減少しているといわれているが,本研究においても減少していることが認められ,これも本疾患がδー貯蔵プ-ル病であることを確認させる所見であった. 以上の成果は本研究の目的を満足するものであった.現在さらにδー貯蔵プ-ル病であることの証明を一層進めるために,ルミアグリゴメ-タ-を用いて,血腫牛と正常牛の血小板のCa放出について検索中である.
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