1.平成3年6月17日より26日まで北海道中山峠、糠平、山田温泉付近を中心に、また同年8月4日から9日まで長野県八ケ岳美濃戸付近でおもに成虫の研究資料採集を目的とした使査を行った。また大阪府立大学、神戸大学所蔵のマツヒラタハバチ類タイプ標本を検し、手持ちの標本と比較して分類学的検討を行なった。 2.おもに成虫外部形態の比較解剖学的研究の結果、マツヒラタハバチ亜科の種レベルの分類にあたっては、斑紋の状態(とくに頭部と脚部の斑紋)、頭部の構造(とくに側触角域の点刻の有無)、それに雄交尾器valvicepsの形状がとくに有用であることが明らかになった。また前翅前縁脈室の微毛の有無は、これまでAcantholydaとCephalciaの2近縁属を分ける重要な形質の一つとみなされてきたが、今回発見されたAcantholyda属の1未記載種の前翅前縁脈室にはCephalcia属の種のように微毛があり、この形質が属レベルでは必ずしも安定していないことが分った。 3.日本産Acantholyda属Itycorsiの亜属の分類学的検討の結果、これまでに日本から知られている同亜属4種のうち、Acantholyda laricis(Giraud)とされていた種は別の未記載種であること、およびこの4種に加え、日本には同亜属の少なくとも4未記載種あるいは未記録種が産することが明らかになった。このうちの1新種については、Acantholyda flaviventrisの名を与えて、記載・発表した(発表論文1)。 4.中国四川省および台湾で1990年と1991年に採集された3種のマツヒラタハバチ類を研究した結果、いずれも未記載種であることが判明したので、Cephalcia sichuanica(四川省産)、Acantholyda taiwana、Cephalcia chui(いずれも台湾産)として記載・発表した(発表論文2、3)。
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