研究概要 |
2ヵ年にわたって行なった研究は,初年度は末梢血液の細胞計量を中心とした観察であり,二年度はそのデ-タ-を踏まえて,胎生期の造血リンパ組織を観察した.以下にその結果を簡潔にまとめる. 1.単球は成熟マウスの末梢血液において大型の単核白血球であり,単球を識別する指標として細胞直径や核胞体比が広く用いられてきたが,3次元立体として見た時に,リンパ球の亜群とくに顆粒リンパ球の計量値と単球が重なり合う部分が少なからずあって,細胞直径ならびに核胞体比などの細胞計量値だけを指標として単球を同定するには困難がある.しかしながら,細胞質突起,細胞膜下液胞ならびに顆粒の存在などの電顕レベルでの形態的特徴を観察する事によって単球の確実な同定が可能である. 2.胎児肝臓において,胎生11ー12日では類洞には原始赤芽球を貪食する卵黄嚢由来のスカベンジャ-マクロファ-ジが多数存在する.しかし,形態学的に単球と認識される細胞は認められない.単球は胎生13日に初めて出現する.胎生期におけるMPSの細胞分化を考える際,胎生13日を境として,その以前と以後とでは分化ル-トが異なる可能性がある. 3.胎児胸腺にマクロファ-ジがはじめて出現するのは胎生15日であり,同じ時期に形態学的に単球とみなされる単核細胞が血管周囲腔に存在するから,胸腺マクロファ-ジは肝臓由来の単球がその前駆細胞である可能性が強い.胸腺のマクロファ-ジ前駆細胞は胸腺内へ血管周囲腔を介して進入すると考えられる.
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