研究概要 |
鰓弓性器官のうち甲状腺と胸腺の動脈をモルモット(60頭),ウサギ(60頭)及びスンクス(72頭)について調査し,既に研究を終了している肉食有袋類,ラット及びヒトに於ける成績と比較検討した. 上甲状腺動脈はウサギを除く全ての種で恒常的であるが,ウサギでは中甲状腺動脈が主体である.これは上喉頭動脈が他の種に比べて起始が高く,甲状腺動脈に送らずに独立することによる.ヒト型の下甲状腺動脈は他の種では稀であるが,総頚動脈から起る同じ動脈がラット,モルモット及びウサギに見られる.最下甲状腺動脈は肉食有袋類,ラット,ウサギ及びスンクスでは極めて稀か欠如する.ヒトでは記録のない独立甲状腺動脈がモルモット,ウサギ及びスンクスに比較的豊富に存在する. 下胸腺動脈はスンクスを除く全ての種で恒常的であるが,スンクスではこれはほぼ半分の体側で欠如し,残りの半分では中胸腺動脈が分布する、しかし、ウサギとヒトでは中脳腺動脈も高頻度に出現する.最上及び上胸腺動脈はラット,ウサギ及びヒトでは比較的多いが,他の種では稀か欠如する.ヒトに多い中胸腺甲状腺動脈は他の種では極めて稀か欠如する.モルモットの浅頸胸腺は特殊で,その動脈は他の種のそれと比較できないが,ここには舌動脈から起り甲状腺動脈も送る胸腺動脈が見られる.これは他の種にはない最も高い起始の胸腺動脈であり,恐らく両腺に対する最も古く基本的な動脈と考えられる. 以上の結果は次のように纏められる.すなわち,甲状腺動脈と胸腺動脈はヒトで最も複雑かつ豊富であり,同時に両腺の動脈がまだ十分に分離していないことを示していると言え,これにモルモット,ウサギ及びスンクスが続く.一方肉食有袋類とラットでは両腺の動脈は非常に単純で,夫々独立している.
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