研究概要 |
前年度に,経口投与トウモロコシ油は,ラットの空腸吸収細胞でカイロミクロンとなり,上皮細胞間腔から,上皮基底膜の小孔を通り,粘膜固有層内に移送されることを報告した。 粘膜固有層は,空腸絨毛の芯構造を形成するが,2N苛性ソ-ダ液で処理すると,コラゲンの微細線維(光顕的には細網線維に相当)が大小不定の束や板状構造をなし,これらが複雑に連結して腸絨毛の形状に一致する線維篭構造を形成している。この線維網構の空隙に毛細血管,絨毛中心部に中心乳ビ管,縦走する平滑筋細胞,さらには,線維芽細胞の他に,マクロフア-ジや血球など自由細胞が充満している。毛細血管の周りには,コラゲンの微細線維が交織して密に絡みついている。窓構造は全く認められない。これに対し,リンパ管(中心乳ビ管)の周りにはコラゲン微細線維がところどころ板状構造を示しながら分布しているのを認める。 トウモロコシ油経口投与後は,大小のカイロミクロンが細胞間腔に充満するが,一部は,線維芽細胞,好酸球,マクロフア-ジなどに貪食されるが,平滑筋線胞にはとり込まれない。固有層に移送されたカイロミクロンは,腸絨毛平滑筋細胞の運動により生じるコラゲン線維網の変形,さらには,自由細胞などの運動により線維網眼及び細胞間を移送されるものと考えられる。毛細血管の周りに,カイロミクロンは集積しているが,窓構造のない,密なコラゲン絨細線維網で取巻かれているために,カイロミクロンは内皮細胞に達することができない。これに対し,リンパ管の周りの線維網には欠落部が多く,カイロミクロンは容易に内皮細胞に到達でき,しかも,これら線維網に内皮が引張られて,内皮細胞間の開大をきたし,陰圧によりカイロマイクロンはリンパ管内に吸収されていくものと思はれる。
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