研究概要 |
ラット視床下部の視索上核および室傍核のアルギニン・バゾプレッシン産生細胞(AVP細胞)にカテコ-ルアミンおよび脳性ナトリウム利尿ペプチド含有終末がシナプス入力していることを二重免疫染色法で証明した。また,室傍核および視索上核のAVP細胞が延髄A1細胞群からの神経支配を受けていることをWGAーHRP順行性軸索輸送法とAVPの免疫細胞化学の組合せ法によって電顕的に観察証明した。以上から,視床下部の大細胞性AVP細胞が延髄A1領域由来のノルアドレナリン性神経支配を受けている可能性が強く示唆された。そこで,AVP細胞の分泌活動への延髄ノルアドレナリン性神経支配の影響を調べるために,延髄A1領域の電気的破壊による室傍核・視索上核のAVP遺伝子発現におぼす影響をin situ hybrydization法で調べた。 Wistar系ラットを用いて,I.正常対照群,II.4日間脱水群,III.延髄A1領域破壊群,IV.延髄破壊後更に4日間脱水処理した群,V.延髄に電極を挿入しただけの群の5群について,室傍核と視索上核ニュ-ロンのAVPーmRNAレベルの変動を調べた。その結果,AVPーmRNAレベルは,I群では室傍核と視索上核のニュ-ロン間で差がみられなかった。II群では両核で著しく上昇した。III群では室傍核で低下傾向を示したが,視索上核は正最群と変らなかった。しかし,IV群では両核ともに上昇がみられた。V群では全例に室傍核の低下がみられた。これらの結果から,AVPーmRNAレベルに対する延髄A1領域を介する神経性の影響は室傍核と視索上核では異なっており,室傍核ではAVP遺伝子発現に促進的に作用していることが分った。さらに,A1領域を介する神経支配機構は両核の大細胞性神経分泌ニュ-ロンの脱水負荷によるAVP遺伝子発現の反応に直接影響しないことが分った。
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