研究概要 |
キャプサイシンの作用は一次求心性知覚ニューロン(ポリモーダルレセプターから脊髄後角まで)に及ぼし,とくに痛み伝達物質であるsub-stancePを含む無髄神経線維(C-線維)に特異的に作用し,substancePを放出することにより鎮痛を惹起するのが基本である。 キャプサイシンを新生仔(ラット・マウスで生後2日目以内)に皮下注すると,一次求心性知覚ニューロンに特異的活性を示すチアミンモノフォスファターゼ(TMPase)が不可逆性に欠如する。この研究結果の背景に,(1)一次求心性知覚ニューロンとくに中枢側の神経末端部のシナプス形成時期が生後2〜7日にあること,(2)このシナプスTMPase活性は生後2日から陽性になること,(3)シナプス形成は神経線維の髄鞘形成し細径神経線維)後にあること,(4)髄鞘形成は生後脊明であることから一次求心性知覚ニューロンは形成直前の状態にあるといえる。キャプサイシンは完成された一次求心性知覚ニューロンに対しても特異的感受性を示しそれに伴なう反応は可逆性であるが,そのニューロンの未熟な状態では特異な感受性の上に神経毒として働き不可逆的反応を惹起する。 老化促進マウス(SAMP-8)を用いて,老化現象における痛みニューロンの動態を観察した。エポキシ樹脂厚切り切片のトルイジンブルー染色で、脊髄神経節ニューロン細胞質にトルイジンブルーに染まる小体が観察された。電顕で観察すると、電子密度が高く,形状はリポフスチン様小体、ミエリン様小体などを呈し,大きさは小胞大から空胞大まで多彩な様相を呈していた。免疫組織学は検索において特記すべき所見は得られなかった。リポフステン様小体が敬見されることから老化現象における動態を示唆することが推測される。
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