研究概要 |
ウレタンとクロラロ-ゼで麻酔したイヌを用いて,外来神経を切除した長さ約15cmの空腸の口側部および肛門側部の輪走筋の運動を記録した.SP(100nM,0.1ml)を肛門側部へ動脈投与すると,投与部位とその口側部に収縮が起こり,SPを口側部へ投与すると,投与部位に収縮が,その肛門側に弛緩が起こった.SPを投与した部位をニフェジピン(100μM,0.14ml/min,5分間)で処理した後に再びSPを投与すると,投与部位の収縮は遮断されたにもかかわらず,口側の収縮および肛門側の弛緩効果はニフェジピン処理前と同様に誘起された.また,ヘキサメソニウムあるいはアトロピンで処理した後では,SPによって両効果は誘発されなかった.従って,SPは腸内反射経路のどこかを刺激して,反射効果を起こしていることが明かである.このことから,壁内のSPニュ-ロンが組み込まれている腸内反射経路の存在が強く示唆される. 肛門側部の粘膜面を電気刺激(5ー20Hz,0.5ー2msec,10ー25V,30秒間)すると,腸内反射によって口側部に促進効果が,口側部を電気刺激すると肛門側部に抑制効果が得られた.両効果はサブスタンスP(SP)拮抗薬である[DーArg^1,DーTrp^<7.9>,Leu^<11>]ーSP(スパンタイド,100μM,0.14ml/min,5分間)あるいは[DーPro^2,DーTrp^<7.9>]ーSP(100μM,0.14ml/min,5分間)で口側部位を処理しても,肛門側部位を処理しても抑制されなかったので,電気刺激によって誘発される腸内反射にはSPニュ-ロンは関与しないと結論できる.また,セロトニン(5ーHT)レセプタ-のサブタイプの5ーHT3レセプタ-刺激薬である2ーmethylー5ーHTの動脈投与によって誘起される腸内反射効果に対しても,上述のSP拮抗薬は無効であった.従って,電気刺激以外の刺激によって誘起される腸内反射経路にSPニュ-ロンは関与すると考えられるので,今後追求していく.
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