研究概要 |
本研究は,大脳皮質運動野への他の大脳領域からの入力を解析することを目的として、PHAーLの順行性標識法,HRPの単一細胞内注入法を用いて皮質一皮質間結合を解析したものである.実験は、麻酔ネコを用いて行い、対側運動野からの交連線維、頭頂野5野、体性感覚野2野、第2次体性感覚野からの皮質投射線維を、各部に植えた刺激電極からスパイクが直接誘発されるものについて、HRPを電気泳動的に注入し軸索内染色を行った、染色反応によって染めだされた単一軸索を連続切片を用いて三次元的に再構築し,運動野での構造を解析した。いづれの軸索も逆行性に染色された細胞体の位置により、その起源となる大脳領域を同定した。単一皮質皮質投射線維は、いづれの領野からのものも共通の性質を持っており,運動野のIII層に主な終末を持ち、さらにI,II,V層にも終末が見られた。単一細胞の終末は、グル-プを成して塊っており、その広がりは直径がおよそ0.5mm〜1.0mmで、単一細胞が2〜5個(平均3個)の終末塊を持っていることが判明した。2野と第2次体性感覚野からの軸索がより多く染め出されたが、恐らくこれらの軸索が他に比して太いことと、量的に多いことを示していると考えられた。頭頂連合野の5野からも強い入力があったが、この部には小脳からの入力を受けていることが判明し、しかも2種類の異なった5野に小脳が異なった入力形式で投射していた。この部位から運動野への投射がHRPの遂行性法とPHAーLの順行性法で明らかにされた。この糸は運動制御において空間的情報と小脳情報を統合し、運動野への制御信号を送っている重要な糸であることが明らかとなった。
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