研究概要 |
平成2-4年度を通じて,先にアフリカマイマイ(Achatina fulica Ferussac)神経節より同定された,achatin-I(Gly-D-Phe-L-Ala-L-Asp)が,Achatina巨大神経細胞の興奮性神経伝達物質であると同時に神経修飾物質であることを証明した. 1.Achatin-Iの構造的特徴は,それがD-Phenylalanine残基を含むことである.これの立体異性体8種(achatin-Iを含む)のうち,achatin-Iのみが,Achatina巨大神経細胞に顕著な興奮作用を示した.検定された23種のAchatina神経細胞のうち,10種がachatin-Iにより脱分極性興奮を示した.従ってこれら神経細胞に対して,achatin-Iは興奮性伝達物質として働いていると考えられた.さらにachatin-I作用のイオン機構が検討され,これがNa^+の膜透過性上昇によることが証明された(平成2年度). 2.Achatin-Iの誘導体の作用を検定することにより,これらの構造・活性相関が観測された.検定された物質のうち,achatin-Iのみが強い興奮作用を示した.すなわちこのペプチドの作用は,立体異性性を持つと同時に,構造特異性を呈する(平成3年度). 3.小分子神経伝達物質に対する既知の拮抗物質が,achatin-Iの興奮作用に拮抗するかどうか検定した.3種のhistamine(H_1)blocker,triprolidine,homochlor-cyclidine,trimeprazineの3種が,achatin-Iの興奮作用に拮抗することを突き止めた. 5-hydroxytryptamine(5-HT)による興奮のある成分が,興奮作用のED_<50>よりもはるかに薄いachatin-Iの存在により,著しく増強されることが観察された.軟体動物から分離されたペプチドのうち,oxytocinとAPGW-amideの作用がachatin-Iの存在により減弱され,FMRFamideの作用が増強された.これはachatin-Iが興奮性神経伝達物質としてばかりでなく,神経修飾物質としても働いていることの証明である(平成4年度).
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