研究概要 |
この実験では同定したモノアミン性ニュ-ロンから電気生理学的な反応を記録するのに適切なin vitroの実験手法を開発し、これを応用して植移された幼若アミン性ニュ-ロンの機能変遷経過を正常ニュ-ロンの発育過程と対比して検討することを意図した。 薄切した(80〜100μm)脳切片標本を5,7ーdihydroxytryptamine(5,7ーDHT)で処理することにより、アミン性ニュ-ロンを紫外光照射下の蛍光によって確認し得た。又、ethidium bromideによる細胞内染色を併用して細胞内電位記録を行い、ニュ-ロンの蛍光標識の有無と反応パタ-ンの対応関係を検討し得た。5,7ーDHTによって標識されるニュ-ロンは主として中脳縫線核に分布し、セロトニン性ニュ-ロンと見なされた、記録された反応の特徴(下降相にhumpをもった持続の長い活動電位、大きな膜時定数等)もこの推測を支持するものであった。ド-パミン性ニュ-ロンはこの実験条件の下では標識されないと結論とれた。5,7ーDHTによる標本処理はニュ-ロンの反応に対して若干の修飾効果(スパイク持続時間の軽度延長、transient outward rectificationの抑制)を及ぼしたが、ニュ-ロンの基本的な反応特徴は保たれた。 上記の方法を発育途上のラットから得た脳切片標本に応用して、アミン性ニュ-ロンの機能成熟過程を調べたところ、脳幹セロトニン性ニュ-ロンは生後早期(数日)の段階で既にその反応上の弁別特徴を顕していた。知見を補完する為に調べた黒質ド-パミン性ニュ-ロンでも同様の傾向が見られたが、生後2週前後までは尚成熟への経過途上にあるものと考えられた。このような正常発育経過に比べての移植未成熟ニュ-ロンの機能変遷については尚明確な知見を得ず、追加検討が必要である。
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