研究課題/領域番号 |
02670065
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
環境生理学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 茂夫 京都大学, 教養部, 助教授 (40124797)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1990年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | パッチクランプ / 温度受容ニュ-ロン / 視床下部 / スライス / ニスタチン |
研究概要 |
12ー15日令ラットより視束前野横断スライスを作成した。ノマルスキ-顕微鏡直視下に、細胞表面を覆う結合織を除去した後、パッチクランプ記録を行った。Ca^<2+>ーfree/Mg^<2+>液でシナプス伝達を遮断し、1次温度受容ニュ-ロンのみから記録した。 (1)パッチ電極での細胞外記録で温度受容ニュ-ロンを同定した。 (2)温度受容ニュ-ロンからのニスタチンによるwholeーcell記録 ニスタチン(100μg/ml)を含むピペットを細胞膜に密着させて、ニスタチンでポア-を形成させてwholeーcell記録を行った。この方法で細胞内2次メッセンジャ-の流出なしにwholeーcell記録が可能となる。 (1)電流固定法:電流の注入により、25℃での膜電位をー60mVに維持した。温度を25℃から35℃に上昇させると、温受容ニュ-ロンでは、膜電位が脱分極して発火頻度が上昇した。冷受容ニュ-ロンでは、膜電位が過分極し、発火頻度が低下した。 (2)電位固定法:50nMテトロドトキシンでI_<Na>を部分的に抑制し、電位固定下に電流を記録した。 (a)温度依存性電流:25℃および35℃で、±50mVのランプ波電位を加え、それぞれの電流電圧曲線を得た。それらの差の電流は、温度感受性を示すチャンネルの電位依存性を示す。反転電位は、温受容ニュ-ロンで約ー40mV、冷受容ニュ-ロンでは、約ー55mVであった。外液のNa^+、K^+、Cl^ーの組成を変え、反転電位の変化を定量した。温受容ニュ-ロンではNa^+が主に関与し、冷受容ニュ-ロンでは、K^+が主に関与していた。それゆえ、温度上昇により、温受容ニュ-ロンでは、主にNa^+透過性が上昇して静止電位が脱分極し、発火頻度が上昇する。また、冷受容ニュ-ロンでは、温度の上昇により、主にK^+透過性が上昇して静止電位が過分極し、発火頻度が低下すると結論された。 (b)電位依存性電流:電位固定下に、ー60mVから0mVへのステップ電位を加え、電位依存性Na^+電流(I_<Na>)、遅延整流性K^+電流(I_K)を記録した。温度を25℃から35℃に上昇させると、温・冷受容ニュ-ロンで、電流はいずれも上昇した。I_<Na>、I_Kは、温度受容ニュ-ロン発火頻度の温度依存性に関わらないと結論された。 (3)温受容ニュ-ロン温度依存性電流の通常wholeーcell記録 温受容ニュ-ロンのニスタチンによるwholeーcell記録の後、同じ細胞の通常のwholeーcell記録を行い、温度依存性電流の変化の有無を検討した。 (a)ピペット内液に2mMATPを含むピペットでの通常のwholeーcell記録:この記録法では、温度依存性電流の逆転電位は、ニスタチン法で得た逆転電位に比べ、21.1mV±17.3(n=6)過分極した。 (b)ATPを含まないピペットでの通常のwholeーcell記録:この記録法では、温度依存性電流の逆転電位は、ニスタチンで得た逆転電位に比べ、ほとんど変化しなかった(n=3)。それゆえ、細胞内ATPが、温度依存性に過分極を引き起こし、ニスタチンで記録された細胞の温度受容性を変化させるものと結論された。
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