研究概要 |
Kチャンネル開口薬(KCO)は一般にagonist収縮を比較的よく抑制することが知られている.そこでこの研究では,Furaー2を細胞内に取り込ませたイヌの左冠動脈リング標本を用いて,細胞内Ca濃度([Ca^<2+>]_1)を張力と同時に測定して,thromboxan A_2 analogueであるU46619のagonist収縮作用に対するKCOの作用を検討した.20mM KClで脱分極するとU46619の[Ca^<2+>]_1の増加作用と収縮は低い濃度から生じ,一方,cromakalimにより過分極するとU46619の[Ca^<2+>]_1の増加作用と収縮は顕著に抑制された.さらにcromakalimの[Ca^<2+>]_1の減少作用を20mM KClで遮断して過分極作用が現われないようにするとU46619ではcontrolと同様に[Ca^<2+>]_1が増加した.KCOによるagonist収縮の抑制作用は膜電位を過分極にすることで,電位依存性Lーtype Caチャンネルを開きにくくしagonistによる[Ca^<2+>]_1の増加作用を抑制するためと考えられる. 次にagonistのもう一方の収縮機構である筋小胞体(SR)からのCa遊離作用について検討した.細胞外液のCa^<2+>を0として,U46619による一過性の[Ca^<2+>]_1と張力の上昇に対する作用を検討すると,cromakalimはこの反応を抑制した.cromakalimの抑制作用は,Kチャンネルブロッカ-のTBAで拮抗され,[K^+]。を20mMとすると打ち消された.cromakalimはcaffeineによるCa遊離作用に影響しなかった.さらに,U46619とcaffeineとを続けて作用させると,それに応じてCa遊離が見られた.cromakalim存在下ではU46619によるCa遊離は抑制されるものの,caffeineによるものは抑制されずむしろ大きくなった.このようなU46619のCa遊離抑制作用は他の特異的なKCOによっても観察されている.すなわち,KCOは,thromboxane A_2受容体をはじめとしたagonistを介するIP_3によるCa遊離をも選択的に抑制すると考えられる.
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